(第九回)「幸せのかたち」を模索する [後編] 2019.1.14

(前編から続く)
今思えば、周りの人にとって、市役所の仕事は5時に終わるというイメージがあったのかもしれない。しかし、私にとって市役所で働くということは、終わりの無い仕事に就いたことに近かった。困っている人の顔が見える分、閉庁時間だからといって自分の仕事を“閉店”できるわけではない。「幸せのかたち」も「困り事」も人の数だけあり、現場の仕事は単純な流れ作業ではなかった。また流れ作業では対応できない案件が、私のところには沢山寄せられた。自分がどう考えどう動くかで、相手の生活や人生が変わる。自分が「最後の砦」かもしれないと何度も思った。だからこそ、どの部署でもどのポジションでも、“生きがい”ともいえる仕事と出逢えたし、まさに今の自分がある。しかし、この使命感や生き方を共有できる人はそう多くはなかった。

 

もちろん、私の使命感に共感し応援してくれる友人や知り合いが、温かい手を差し伸べてくれた。彼ら、彼女らのおかげで、今の私たちはある。しかし、緊急避難的に1日お願いできたとしても、明日はどうしようかと考える。だからこそ「制度(サービス)の構築」が必要なのだ。彼・彼女らの優しさや応援の声に報いるために、お礼としての対価や何かあったときの保険など制度上にしっかりと書き込むべきで、人の温かさ云々とは別の動きが必要なのだ。

これは、地方でも都会でも同じことだ。都会の場合は、様々な生き方・働き方があり、それらの数(母数)が多い分、課題や困り事も束になって存在する。だからそれがマーケットになり、民間の力が育つ。地方の場合は、都会のマス的な展開は難しいから行政がその隙間を埋める必要がある。しかし、住民の困り事というのは刻一刻と変化し、一方で、行政は担当者によっては制度運用が鈍化し硬直化することもある。その結果、制度と現実との間に「齟齬」が生まれていく。そんな場面を何度も見てきた。
私は子育て一つを挙げてみたが、住民の幸せ、そのまちの豊かさというのは、総じて「多様な生き方」をサポートするための「多様な制度」が充実しているか否かではないだろうか。その意味で地方は、まだまだ成長の可能性が高いと考える。

 

「住民が自分たちで課題を解決する。」今年のZABは、そのお手伝いもしたいと思っている。行政に何でも頼るのではなく、自分たちの困り事は自分たちで解決しようという「住民自治」の体現。従来からある制度でいうと、PTAや子ども会、自治会などがそれに当たるだろう。とはいえ、時間や労力を費やす割に自分の関心事になかなか切り込んでいけず、結局離れていく人々も多いだろう。そうであれば、これらの従来組織と連携する「新たな組織」を作ればいい。そう考えている。
私は、昨年4月から日本中を回り、ZABのミッションを模索する中で、このようなことを次のステップにと考えるようになった。これは、住民の幸福に直結し、行政職員のサポートにもつながると確信している。

 

平成最後と冠が付いているこの年末年始、年が明けてもなかなか自分の「幸福論」に辿り着かずにいる。
もう一度、アリストテレスの『ニコマコス倫理学』(高田三郎訳・岩波文庫・1971)を引っ張り出して読み直している。今から2400年前の賢人たちの凄さに改めて感心しながら、その難解な文章の中にも、2019年を生きる私にストンと落ちてくる言葉がある。
今、改めて自分と向き合ってみると、まず1つは、私や私の大切な人たちを育んでくれたこの社会の役に立ちたいと願うことは変わらない。生まれ育った故郷や第二・第三の故郷のために、自分の力を尽くしたいと思う。
しかし、それが全てか。そうではない。
私は、私が考えていること、私の根底にある使命感を理解してくれる人がたった1人でもいいから存在してほしいと思った。そして私も同じように、素朴に生きる彼・彼女らに共感したい。このコラムが、その1つのツールになることを願いながら、今、沖縄で内なる思いを言葉にしている。

 

2019年は「今帰仁 いまじん太鼓」元旦奉納演舞からスタート(世界遺産・今帰仁城址)

いけ

いけ 別府生まれ・別府育ち。趣味は海鑑賞・ヨガ・寝ること。

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