(第十回)息子の「選択」 2019.1.21

私の地元・大分県別府市の「鉄輪スケッチ大会」はスゴイ。
何がスゴイかというと、上位入賞者だけを褒めたり展示したりする“よくある”コンテストではなく、提出された作品全てを展示し、講評するというところ。大分県立美術館の新見館長を始め錚々たる芸術家たちが、作品全てにコメントをくれる。またそのコメントが、聴いていて面白い。スカスカの絵は「余白の美」となり、途中で飽きてしまったであろう絵は「テキトーの良さ」となり「物事、引き際が肝心だ」と褒めてもらえる。
かくいう私は、息子と2年前から参加している隠れファン。当時、地方創生のセクションで役所外の方々にヒアリングしていたとき、このスケッチ大会の話題が出された。「地域の人は自分たちのまちづくりをしているのに、行政はそんなことも知らないのか」というお叱りの下りだったように思う。
お勧めいただいたものはとりあえずやってみるというのが私のスタンス。「物は試し」と参加した。

 

2年前、息子はとても自信をなくしていた。何をやっても失敗するし、何をやってもママに小言を言われる・・・今思えば、そんな負の連鎖の中にいた気がする。初めての子育て。相談する人もおらず、私も息子もどうしたらよいのか分からなかった。
諦めの中にいた息子は、このスケッチ大会でも上手く描けない自分に腹を立て何枚も破り捨てた。そして最後に「テキトー」に描いた絵を提出した。
完全に他人事で参加した講評で、3人の審査員全員が「これを描こうと思った君の感性が素晴らしい」と、息子を前に呼んだ。
息子はその日沢山の言葉をもらった。技術的な絵の上手さではなく、息子は「自分の選択」を褒めてもらえ、みるみる顔つきが変わった。このことが、彼に大きな自信を付けた。
その自信が、彼を秋田に住まわせているのかもしれない。今日、1年ぶりのスケッチ大会に参加し、私はふと思った。

 

秋田県の「教育留学」制度10歳の息子は、私の東京転勤を機にさらに北上し、今は秋田県北秋田市の小学校に通っている。
息子には色んな経験の場を提供したい、そう思って育ててきた。選ぶかどうかは本人次第。だけど、私はこの子に選択肢を増やすお手伝いはできる。そう思ってきた。この「教育留学」もその1つ。そろそろ帰ってきてほしいなという私の思いとは裏腹に、息子の決心は今も固い。

 

 

「鉄輪(かんなわ)スケッチ大会」の講評タイム。一枚一枚、そのあるがままを褒めてくれます。

いけ

いけ 別府生まれ・別府育ち。趣味は海鑑賞・ヨガ・寝ること。

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