(第十二回)ZAB流ワークショップ [後編] 2019.2.4

前編から続く)
今回、この「ワークショップ」開催に当たり、私は絶対にこだわりたいことがあった。それは、子育て世代が気軽に立ち寄れるような仕組みを作るということだ。このことは、この村にとっても1つの挑戦だった。

 

私自身、子育て中の母親だ。
子どもが産まれてからのこの10年間は、独身のときと違って出来ないことが圧倒的に増えた。ちょっと一人でお買い物はできないし、映画やカフェに行くことはもちろんできない。
今、息子は10歳になり、私と一緒に行動するかどうかは息子自身が決めるようになった。しかし、小学校低学年まではさすがに一人で留守番をさせることもできず、そんなときの息子は決まっておとなしく座ることのできないタイプの子どもだった。
そもそも、親の都合で振る舞いを変えないのが“子どもらしい子ども”なはず。
とはいえ、周囲の人から「子どもの声がうるさい」と言われると、母親である私はいつも肩身が狭くなった。図書館では睨まれ、病院の待合室で入室を断られたこともある。家の中と公園以外は、行きづらいと思うようになった。
そこで、このワークショップのチラシには「赤ちゃん連れOK」という言葉をちりばめた。住民の普段の生活をそのままこの会場に持ってきてもらいたい、そう思った。
この思いを村役場に伝えると、幼保連携室長、保育園の園長先生が自ら名乗り出て、臨時保育園を開設してくれた。
しかし、村としても初めての試み。利用者はいないかもしれない、そう言われた。
でも私は、結果的に利用者が0人でもいいと思っていた。これを、みんなで「すること」に意味がある、と。これは、過去の私の「子連れの親子を受け入れてくれる社会になって欲しい」そんな願いからだった。
ところが蓋を開けてみると、予想以上に、子ども連れの親子が足を運んでくれた。会場となった体育館の端に、子どもたち用のテーブルを急遽設置し、模造紙とペンを置くと、子どもたちは、その中で色々な遊びを生み出した。大人たちのワークショップが終わる頃には、体育館後方では子どもたち主催の「紙飛行機とばし大会」が開かれていた。
子どもの声が響く中で、大人がおしゃべりをする。日常の、当たり前の光景が広がった。

 

役場も変わり始めた。
変わるというと語弊があるかもしれないけど、楽しんでいることが身体から溢れる職員が明らかに増えた。目をキラキラさせて「こんなこともやりたい」「あんなこともやりたい」と、私のところに色んなアイデアを語りに来てくれる職員が現れるようになった。私もそんな彼らの声を聴くと、テンションが上がり、自分の目が輝き返すのが分かる。
ワークショップの最中にも、「次のワークショップは、子供会連合会にも声をかけたい。今の子供会は中学2年生がメインだから、この子たちの経験にもなると思うんだよ」とか。
ZABの先進事例紹介に対しては、「来年度視察に行けるよう、予算化したいから相談に乗って欲しい」とか。
当初、この事業に対して「どうせこんなことやっても・・・」と他人事感が否めない空気だった職員たちも、今や率先して会場の手伝いに来てくれるようになった。

 

「まちづくり」とは、「ひとづくり」なのだと感じる。
もちろん、そこには私自身も入っている。
九州の田舎で市役所職員をしていた私と、沖縄県今帰仁村で生きることを決めた人が今こうして出逢うことそれ自体が奇跡に近い。互いにこの村を思う気持ちが、化学反応を起こし、今、明らかに互いの変化を感じるようになった。

 

4カ所目のワークショップを終えた時、内閣府から出向している副村長がこう言った。
「初めての取組で最初はどうなることかと思いました。しかし、この村が掲げる“村民協働のまちづくり”とは、まさに今回のワークショップなのであり、ZABさんたちがその道を切り拓いてくれたのだと思いました」と。

 

私たちZABは、必死に走りながら、この組織が社会に果たす役割を見つけ始めている、そう感じた。

 

子どもたち主催の「紙飛行機大会」

いけ

いけ 別府生まれ・別府育ち。趣味は海鑑賞・ヨガ・寝ること。

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