(第十四回)今、ここにいる自分 2019.2.18

空き家コラムを書き始めて間もなく半年。内なるモノを言葉にするという作業は、普段私の中にどれだけの感情や言葉がうごめいているのかに気付かせてくれる。同時に、頭を真っ白にすることが苦手な私にも気付いた。過去と未来に加えて、自分以外の人のことを絶えず考え、「今、ここにいる私」に目が向いていない。

 

学生時代も社会人になった今も、世の中に対して何をしたいのか、自分の声は割と感じ取ってきた。沸き起こる“ワクワク感”を羅針盤に、どんな困難な道であっても一歩ずつ進めば、微力ながら社会の役に立つことができ、次のステージに到達するという(根拠のない)自信がある。私のルールは、何かを判断する時、自分が得しようという気持ちを一切持たないことだ。物心ついた頃から、私の両親がいつも言っていた。だから、仕事を自分の為にしないというのは、とにかく徹底している。それを貫いているからだろうか、決断するまでは、全体の8割くらいの力を使って考えに考え抜くけれど、“自分以外の誰か”にとってどうかと考え、自ら覚悟持って決めたことについてはこれまで一度も後悔したことはない(もちろん、発展途上なので知識と経験に未熟な部分があることは否めない。だから、“そのときの自分において”精一杯の決断であるという枕詞は付くけれど…)。

きっと誰しもが、自分のルールをもって、社会の一人として役割を担っているだろうし、人の数だけそのルールはあるのだと思う。

 

さて、他人の幸せにとってどうか、であれば私流のルールで難なく突き進むのだけど、自分の為となるとこれがさっぱり分からない。
プライベートの世界でいうと、会社における自分の役割に加え、妻・母、高齢の親からみた娘…と家庭での役割が増えると、やるべきことも増える。当然、“自分の軸”と“他人の軸”それぞれの結論が競合する場面も起こる。そうすると、“自分の為”はつい後回しになる。自分のワクワクに蓋をした途端、私は何をやりたくて、どこに向かっているのか分からなくなる。
考えてしまうのは、他人のことだけではない。過去と未来についても、無意識に考えていることが多い。既に終わった過去を復習し、まだ見ぬ未来を想像する。しかしこれは、私に限らず多くの人間がそうらしい。変えられない過去を悔やみ、まだ起こってもない未来を悩む。それで心が疲れてしまう人が世界的に増え、ヨガや瞑想といったマインドフルネスが注目されている(NHKスペシャル・シリーズ キラーストレス「第2回ストレスから脳を守れ〜最新科学で迫る対処法〜」)。
頭では分かっている。だけど、思考のパターンというのはそう簡単には変えられない。私はもう一度、自分の為の時間を過ごす工夫をしてみることにした。過去でも未来でも、他の誰かでもなく「今、ここにある自分」と向き合う時間を作る。このOFFスイッチが、きっと「良い仕事」にもつながるはずだ。

 

試しに始めたのが「強制終了」。敢えて、考えない時間・考えられない時間を作る。まだまだ貪欲に模索中だけれど、今、私の生活に欠かせなくなっているものが3つある。いずれも短時間でトリップできることが最大のポイント。
まずは、映画。今は色んな方法で映画鑑賞できるけれど、自宅のテレビ・DVD・ネット配信ではダメ。私の場合、途中で家事を始めたり仕事を始めたりと気が散ってしまい、うまく集中できない。だから、映画館へ足を運ぶことにした。いつも頭の中が忙しく動いていて、OFFにしたくてもできないことに気付いた昨年終わりから、1ヶ月に1度、映画館に行くと決めた。自宅を出て30分後には映画館に着くルートも開拓したので、前後含めて3時間あれば映画を1本観ることができる。
映画館に行けば手っ取り早く頭が真っ白になる。このことに初めて気付いたのは息子が3歳のとき。仕事も家庭も、色んな事が煮詰まっていた。そんなとき一日代休を取り、何年ぶりかに映画館に飛び込んだ。そのときの映画が『ワイルド・スピードMEGAMAX』。ストーリーも知らず、それまでのシリーズも観たことがなく予備知識なしで臨んだ映画だったけど、私は完全に引き込まれた。ただのアクションの映画かと思いきや、それは全然違っていて、一言でいうならばテーマは「家族愛」。シリーズ5作目の本作は、シリーズ化された映画のつまらなさは一切なく、新鮮だった。カーアクションでスッキリして、家族愛に感動して、映画館を出るときの私は爽快感に包まれ、新たな力がみなぎっていた。それから、ワイルド・スピードシリーズは私の人生の楽しみになった(今年の夏、最新作が公開されるようです!)。
映画なので、当たりも外れもある。最近の当たりは『アリー/スター誕生』。レディー・ガガとブラッドリー・クーパーが主演のアカデミー賞候補作。自信の無い彼女の才能を見出し、大きな舞台へと羽ばたかせていくというストーリー、そしてアリーが、彼を心から尊敬し愛し続ける姿にとても共感した。映画が歌を通して表現されていく。一昨年アカデミー賞で最多6部門を受賞した『ラ・ラ・ランド』と同様に、これは映画館で観るべき映画だと思った。『アリー』は、珍しく2回も観に行ってしまった。

 

自分のことは自分が一番分かっているはずなのに、まだまだ分からないことが多い。このコラムを通じて私が向き合っているのは、自分自身かもしれない。
猛烈に仕事をして、猛烈に遊べるようになりたいと思う。一回しかない人生だから。

いけ

いけ 別府生まれ・別府育ち。趣味は海鑑賞・ヨガ・寝ること。

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