(第十六回)廃校に光を当てる 2019.3.4

昨年3月、山間にある小学校が46年の歴史を閉じた。
「この小学校は、ここに生きる人々の心の拠り所です。もう一度光を当てていただきたい。それには、地域・企業・行政が三位一体となる必要があります。」
髙木市長のこの言葉に、私たちは胸を打たれた。それと同時に、行政の“覚悟”のようなものが感じられた。

 

ここは、福岡県うきは市。
人口約3万人のこのまちは、柿16種類、桃37種類、ぶどうに至っては49種類と四季折々のフルーツが一年中収穫されている「フルーツ王国」である。
私は、初めて訪れたこのまちにどこか親近感を抱いていた。それもそのはず、私の生まれ育った大分県との県境に位置し、山を越えればそこは大分県の日田市。「生活の色や香り」は行政区で区切られるものではなくグラデーションのようにつながっているのだと改めて感じた。
全国空き家バンク推進機構(ZAB)理事長の樋渡は、私がこの組織(ZAB)に出向する前から「廃校利活用」の重要性を叫んでいた。しかしながら、沖縄県今帰仁(なきじん)村で住み込みしながら働く少数部隊のZABには、まだまだ手を広げる余裕はなかった。
髙木市長・今村副市長を始め職員の皆さんの思いを聴く中で、生まれ故郷とどこか同じ臭いのするうきは市に時間を見つけては通うようになっていた。時には子どもの意見も聞いてみようと、息子も連れて行った。
そしていつしか私は、このまちの廃校利活用というミッションを握りしめ福岡空港に降り立つようになっていた。

 

全国見渡すと、毎年約500校前後の廃校が発生している(出典:文部科学省「みんなの廃校プロジェクト〜廃校施設の有効活用〜」)。そもそも、集落は小学校を中心として形成され、小学校は人々の生活の中心に置かれていたはずだ。「その小学校」が閉じ、子どもたちが街中の小学校へ通い始めるということは、この集落の未来を自ずと連想させ、語り始める。気持ちが明るくなる話題ではない。
もちろん、地域は違えど現役の市役所職員である私も、税金で運営する行政側の理屈は当然に分かる。しかし、頭で分かっても、気持ちでは理解できないこともある。自分の通っていた小学校、我が子が通っていた小学校、自分の暮らす集落の中心にある小学校、それが閉じるということは、当事者にとってどれほどのことか。私は、まるで我が事のように胸が苦しくなった。

 

私たちには、もう1つの重要なミッションがあった。それは「住民の合意形成」だ。
言葉にすればこの一言だけど、これはそんな簡単なものではない。このことは、私の地元の別府、住み込みで働く沖縄で学んだ。そもそも生き方も価値観も違う人間が、一つのことに合意することなんてできるはずない。それに、よそから来た人に“形成”なんてされたくない・・・と、私なら思う。
とはいえ、まずは住民の話を聴くということから始めようと思った。ここで生きることを決めた人たち、代々この土地を守っている人たち、この人たちの声を聴くこと、これをスタートに、「私たちに何ができるのか」「どんなお手伝いができるのか考えていこう」そう思った。

 

昨年3月姫治(ひめはる)小学校が閉校し、今年3月には妹川(いもがわ)小学校が閉校する。うきは市は、2年連続で山間にある小学校が閉じる。ここに暮らす住民からは、悲しさや寂しさというより、どこか諦めに近いものが感じられた。話を聴く中で、このまちで必要なことは、まず「見られている」「注目されている」という「場」を作ることだと思った。そこで、私たちZABはうきは市役所と連携し、廃校となった姫治小学校の見学会を開くことにした。
20181216日(日)、急遽決まった見学会であったにも関わらず、ZABの連携企業、雑誌「BRUTUS(ブルータス)」の掲載(2018.8.15号「ニッポンの廃校30選」)効果もあり、東京・大阪・福岡・佐賀・大分から14法人・20人、様々な分野のエキスパートたちが集まった。他にも、行政職員から視察の申し出もあり、参加者は予定を遙かに超える30人。それに加え、地元の方々が20人参加。会場は50人を超える人で賑わった。
この見学会のメインは、実は、小学校の見学ではない。私たちの狙いは、髙木市長の思いでもある「地元・企業等・行政」が三位一体となる「場づくり」だった。
昼食会場の新川(にいかわ)コミュニティセンターでは、女性部を中心とした炊き出しの豚汁と地元の食材を使ったお弁当を食べながら、ディナー・ショーならぬ「ランチ・ショー」を展開した。ZAB理事長・樋渡が、絶妙なタイミングで参加者を次々と当てていく。見学会を終えた率直な感想、今日訪れた各々の目的が笑いと共に語られた。

 

「この山の中の学校に、全国からこんなにも沢山集まってくれて、正直驚いている。」
新川・田篭(たごもり)の区長さんたちの言葉には少しの困惑と、しかし、その表情は明らかに「諦め」から「ワクワク」へと変わっていた。

 

いけ

いけ 別府生まれ・別府育ち。趣味は海鑑賞・ヨガ・寝ること。

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