(第十八回)公共政策の「原点」を探る 2019.3.18

2019年17日、今年最初の仕事は沖縄県今帰仁村での「ZAB勉強会」開催だった。冬休み中の息子を連れ、年末年始泊まり込みで準備をした。
「ZAB勉強会」は今回で6回目。2017年10月、NPO法人ETIC.が主催した研修の1コマで、突然ファシリテートを務めることになったことが全ての始まりだった。
向学のためにと参加し、お客様のようにちょこんと座っていた私に、ZAB理事長の樋渡が「はい。司会して」と一言。この樋渡の無茶振りに、私は生まれて初めてのファシリテートに挑戦することになった。テーマは「空き家利活用」。テーブルに集まった20人強の皆さんは、互いに見ず知らずのメンバー。共通項は「空き家」に興味があるということだけ。
わずか1時間弱ではあったけれど、大変盛り上がった。空き家を負の価値から正の価値への転換するアイデアがどんどん出た。あのときの雰囲気は、今もメンバーそれぞれの中に心地よく残っているだろう。そのときのメンバーから、また集まりたいという声が出て、今も不定期開催を続けている。昨年12月の別府市鉄輪(かんなわ)開催に続き、地方開催は今回で2回目。

 

「ZAB勉強会」は、とことん手作りなので形式がない。そのとき会場にお越しくださった方々が何を求めているのか、どうしたら喜んでもらえるか、それだけだ。
急遽、「ZAB理事長・樋渡啓祐(前武雄市長)とZAB理事・中田宏(前横浜市長)」の対談をセットした。ここに来てくれた人たちはラッキーだ!こんな豪華な対談は、最初で最後かもしれないと思った。首長経験者の2人の対談は、みるみるうちに会場を巻き込んでいった。今帰仁村の無いモノ探しではなく、有るモノ探しのスタートだ。
住民にとっては当たり前の“日常”を、方法によってはブランド化できる。例えば、今年初めて成人式を世界遺産の今帰仁城で開いたという話を聴き、全国の成人式“難民”が、殺風景な体育館ではなく、世界遺産で友人と祝える企画はどうか。村民が自宅庭で当たり前に作るマンゴーやパパイヤを、例えば「村民の大城さんが作ったマンゴー」として、ふるさと納税の返礼品にしてはどうか。自宅の庭で作ったものだから、多少不格好かもしれないけど、地元の日常を味わえる。2人が次々と出すアイデアに、参加者の目が輝き出すのが分かった。会場は一気に“自分事”になっていった。

 

今回の勉強会は、もう1つの目玉を用意していた。今帰仁村に隣接する名護市羽地地区の支所長である謝花良竹(じゃはな よしたけ)氏による事例発表。謝花氏の仕事のスタンスが、私は大好き。
謝花所長が大切にしてきたのは「住民主体のまちづくり」。まさにZABが今回勉強会のテーマとして掲げた「人づくり」だ。行政が住民に何かを押しつけるのではなく、住民が自分事として考え意見する仕組みを行政が作り、ただ伴走するのだ。
謝花氏は、今は住む人がいなくなった空き家をどうするか住民と共に考えた。そして、リノベーションして生まれ変わった「古民家カフェ」の運営を地域の住民たちが主体的に行う雰囲気作りを行った。古民家カフェ「かめたろーやー」には、住民のアイデアで「買い物弱者」に食品を届けるための移動販売車も設置した。これは、住民から出された困りごとや解決のアイデアを実現するため、行政が予算化などのお手伝いをした好例。行政からの押しつけではなく、住民の思いが形になったところが素晴らしい。
しかし、謝花氏のやり方は簡単なようで実は難しいと私は思う。まさに「言うは易し、行うは難し」。住民が大切にしているもの、解決したい課題を、住民が主体となって考えていくには、住民と行政の間の信頼関係がないと進まない。素朴だけど、ここに公共政策の「原点」があると思った。

いけ

いけ 別府生まれ・別府育ち。趣味は海鑑賞・ヨガ・寝ること。

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