(第二十回)様々な日常 2019.4.15

20年ぶりに、髪をショートカットにした。
思い切ってイメチェンすると、周りの評判はさておき、本人はすこぶる気持ちが良い。
年度末と年度初めは想像以上に忙しく、今もまだその中にいる。失恋とか、何か一念発起したとか、ここでお話できるような面白いネタがあるわけではなく、素朴な日常の中で少しでも楽しみを見つけようとバッサリ切ったというのが真実。

 

日常といえば、息子の日常も変化した。
息子は、秋田県での「教育留学」を終え、この春東京に戻ってきた。
“戻った”という言葉が適しているのか、正直難しい。というのも、息子は大分県別府市から、東京に一度も住民票をおかず、そのまま秋田県北秋田市へ行ってしまったからだ。息子の生き方は、「教育留学」と「移住」を実行した第一号として、日本経済新聞(2018年317日)にも大きく取り上げられ、秋田放送でも特集が組まれた(2019年32日)。
秋田県教育委員会をはじめ、北秋田市の津谷市長及び佐藤教育長の先進的な考えに、息子の人生がスイングしたことが、母親としてはもちろん地方創生に携わる職業人としても驚きの連続だった。まさに“運命”としかいいようのない13ヶ月だった。

 

息子の東京デビューは先週月曜日。始業式の日だった。
校舎の中に体育館があることや、運動場が土ではないことなど、地方で生まれ育った私たち親子には見慣れない光景が、ここに暮らす子どもたちには日常だった。
そんな中、息子は転入生としてクラスで紹介された。初日は保護者同伴ということで、私は息子の様子をドキドキしながら廊下から見ていたけれど、本人は自分が転校生であることを楽しんでいるようだった。

 

同じ時、友人の子どもも同じく区立小学校に転入した。その友人の話を聴いて、私は耳を疑った。担任の先生が転入生を紹介するとき、その児童をネタにクラス中の笑いをとっていたというのだ。担任が「田んぼの中の小学校から来たの?」と質問し、その児童が「違います」というと、「でもこんな街中じゃないでしょ」と。すると、クラス中がドッと笑う。挙げ句の果てに「なんだ。田んぼの中じゃないのか。つまんないの」と。そこでまたクラス中がドッと笑う。
私はその場にいたわけではないので詳細は分からないけれど、担任の先生の地方に対するステレオタイプな質問と、それに答える転入生とのやりとりを見て笑う子どもたち。なんだか、残念な気持ちになった。

 

息子が通っていた秋田の小学校は、転入生である息子のよいところを沢山引き出してくれた。歴史が得意だと分かると、皆の前で戦国武将の説明を任せてくれた。読書が好きだと分かると、色々な本を紹介してくれた。息子の愛読書『ハリーポッター』シリーズは、秋田で出逢った本だ。そして、旅好きな担任の先生は、社会の授業で、息子の生まれ育った九州の話を何度もしてくれた。そんな日常は、息子も誇らしかったと思うし、きっと周りの子どもたちにも、何かしら考えたり感じたりするきっかけに繋がったのではないかと思う。
様々な個性があり、都会も地方も色々な土地で人々は生きており、暮らしていること。それを日常の中で体感することは、どんな勉強にも変えられない時間だと私は思う。
この地域にずっと暮らしている子どもたちと同様に、転入生の生き方やこれまでの軌跡を大切に紹介できる学校は、どんな道徳の授業よりも、広い視野と豊かな心を育む日常を子どもたちに提供できるのではないか。そしてそれこそ、大人たちが必死に取り組んでいる「地方創生」そのものに繋がるのではないだろうか。

いけ

いけ 別府生まれ・別府育ち。趣味は海鑑賞・ヨガ・寝ること。

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