(第二十八回)東京への心理的ロックダウンが危険な理由 2020.4.8

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、緊急事態宣言がいよいよ発令された。このまちは、今日からどの様に変わっていくのだろうか。
未だ近所のスーパーでは買い占めが起きていて、紙製品はもちろん食糧が品薄状態(ちなみに、私の住む地域の住民たちは、肉食系でスパゲティがお好きな模様。いつ行っても商品棚からこれらの物は消えている)。こんな風に、日常の一風景を切り取っても、東京のまち全体が軽いパニックを起こしていることが推察される。
住んでいる人・訪れる人が多い分、全体の総和として、人間の感情が大きく表れることは致し方ない。人口が多い東京は、平時は消費マーケットとしてインパクトが大きい一方で、非常時は、今回のように長く続く買い占めとそれらがもたらす不安心理の助長というマイナスのインパクトも如実に表れる。この負の循環を断ち切るには、(一住民としての私の肌感覚ではあるけれど、)まだ随分と時間がかかるのだろうと感じている。

 

昨夜、総理会見を報じるNHKニュースを食い入るように観た。
最後にスタジオのアナウンサーが「今こそ、『大丈夫?』という声掛けや、『不安が多いだろうけど、大丈夫だからね』という勇気付けをしてあげることが必要だと感じる」という趣旨の発言をした。
私は思わず、大きく頷いた。

 

私自身、特にこの1週間は、新型コロナウイルスに関する最新情報とそれに伴う政府及び東京都の判断に対するキャッチアップ、さらに仕事及びプライベートという現実生活への落とし込みに、とてもエネルギーを要した。前例がなく、何が正しいのかその基準すら分からない中、おそらく多くの人たちが、「有益な」情報を求めて、日々さまよい続けているだろう。これはもちろん東京とか地方とか日本の中だけの話ではなく、世界中が、今同じ状態にあるのだ。

 

私は地方出身者であり、今も地方に自分の拠点があるからこそ特に敏感なのかもしれないが、東京に住む人たちを精神的に追い詰める発言を見たり聞いたりする度に、胸が張り裂けそうになる。
まるで“ゾンビ”がウヨウヨ歩き回る街に暮らしている人間であるかのように、そして、「もしかしたら、あなた自身もその“ゾンビ”じゃないの?」と言われているような発言には、少なからず不安と悲しさを覚える。

 

東京の場合、住民に対する意識付けについては、小池都知事の政治的立ち回りが非常に奏功していると思う。有権者として支持をしているかどうかを申したいのではなく、行政のトップとして住民に伝えたいことが明確で、きちんと住民に行き届いていると感じるからだ。例えば、発言の内容、タイミング、選んだ言葉等が適切であるという意味で、政治家として素直に素晴らしいと思う。
おかげで私も含め、「外に出歩いてはいけない。“STAY HOME”だ」という完全な刷り込みができており、新型コロナウイルスに対する恐怖心と、医療崩壊を起こしてはいけないという強いモラルが生まれた。

 

一方で、これには弊害もある。東京ではないエリアに住む人たちに対しても強力な刷り込みをしてしまい、「東京は、自分たちとは違う生き物が住んでいるエリア」のような、誤った印象を持つ人々を全国に生んでしまったことだ。
東京が感染拡大地域に指定される前、急遽仕事で戻った故郷で「東京から来た人たちが、ウイルスばらまいているらしいよ」という言葉を、たまたま耳にした。見ず知らずの人たちの会話であったとはいえ、あのときの光景は、未だに頭から離れない。
私のような地方出身者には、いつも心の拠り所として「故郷」がある。地方に故郷がなくても、ふるさと納税制度などを使って、地方に何らかの支援をしたいと考えて行動している人たちが東京にはいる。
これだけクローズアップされると、ここに住む人たちを一括りに取り扱いたくなる気持ちもわかるし、様々な考え方や意見があることは理解している。しかし、これは「医療関係者への差別を無くそう」という働きかけと同じだと思う。

 

我々も節度を持って生活している。自分が感染しているかもしれないという危険性を常に持ちながら。
しかしこれは、東京に暮らす人だけでなく、地方に暮らす人も皆同じ気持ちで、先の見えない中を一日一日過ごしているはずだ。
地方出張を控えるのと同じく、東京出張を控える。手洗いをしっかりする。三密を回避する等、我々にできることは限られていて、どの地域に暮らす人たちもそれを粛々と実施するしかない。

 

心理的分断は、それこそ人類の危機になる。
我々が闘う相手は、人間ではなくウイルスであることを、今思い出したい。

 
 


通勤途中の「銀座・日比谷」の様子。緊急事態宣言前は人とぶつかりながら歩くこのエリアも、一夜にしてゴーストタウンと化した。

いけ

いけ 別府生まれ・別府育ち。趣味は海鑑賞・ヨガ・寝ること。

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