(第三十回)忘れられない正月 2021.1.26

2021年元旦。私は、ZABに来て4度目の正月を迎えた。
9歳だった息子は中学生になり、今や、私の身長を超えた。
体つきが明らかに変化していく我が子を見ていると、時間の経過がはっきりと可視化され面白い。

 

今年の正月は、私にとって特別だった。
大晦日のNHK紅白歌合戦で、あのユーミンが「応援村」を大々的に紹介してくれることになったからだ。

 

夏のある日、ちょっと不思議な体験をした。いつものように仕事をしていると、ふと、子どもたちの「えがおイラスト」がところ狭しと浮かぶ“大きなホール”のイメージが降りてきた。脳裏に浮かんだわずか一瞬のこの映像。直感的に、紅白歌合戦だと思った。
私は、あの時の不思議な光景を胸に秘め、とにかく一日一日前に進んだ。必死だった。
答えのない問いに孤独を感じ、一人泣きながらパソコンに向かった日は数えきれない。「私には都会の生活は向いてない。ふるさとに帰ろう」何度となくそう思い、ZAB理事長の樋渡に打ち明けた。外部の人との交渉時は、口から心臓が飛び出そうなくらい緊張連続だった。今だから言える話だが、実は体調を崩し、生活全てにドクターストップがかかった時期もあった。しかし、不思議なことに、そんな困難に出逢うたびに必ず新たな仲間が現れ、仕事は順調に、そしていつしか紅白歌合戦に向けて突き進んでいった。
20201231日、初の無観客となったNHKのスタジオで、松任谷由実さんとフジテレビから飛んできたスモール3(出川哲朗さん・岡村隆史さん・田中裕二さん)が応援村「77億人えがおプロジェクト」と共に登場。松任谷正隆さんの粋な計らいで、バンドメンバーを含めたステージの皆が、応援村のTシャツを着てくれていた。
本番を眺めながら、私は「感動」などという一言には収めきれない、なんとも言えない不思議な感覚に包まれた。

 

そしてもう一つ、今年の正月を忘れられないものにした出来事がある。
それは、学会への論説寄稿という挑戦である。
正直申し上げると、元旦までは、「諦める」という選択肢も頭をよぎるほどの一大事件だった。

 

昨年の夏、まさに応援村真っ只中のある日、ZAB理事の清水先生から「不動産学会誌に寄稿してみないか」と声を掛けられた。好奇心の強い私は、迷わず「是非やらせてください」と答えていた。
お題は、「土地改正基本法が空き地問題の解決に有効であるか」というもの。
当時の私は、「土地基本法」はおろか、「空き地問題」とはなんぞや?というレベル。とはいえ、官僚の皆さんが考えた法改正は当然有効に決まっているし、全国の事例を集め整理すれば論文は書けるだろうと安易に考えていた。
とはいえ、先に白状したとおり応援村に七転八倒する毎日で、あの時の私には、「空き地」の「あ」の字が入る隙間すらなかった。
冬になり、私は若干ソワソワしてきたもののまだ高をくくっていた。
ところが、予想もしていない恐ろしい展開になった。
12月半ば、試しに問い合わせてみた自治体から「そんな法律知らない」という返事が返ってきたのだ。それどころか、「その法律を担当する課はない」とまで言われてしまった。担当課がないということは、私が質問しても答えてくれる人がいないということ。血の気が引くというのは、こういうことかと思った。
しかも、「誰も担当しなくて良い法律」ということは、「この法改正は、自治体にとって有益ではない」ということの表れではないか…。
大変なテーマを引き受けてしまったことに気付いたのが、12月下旬。論説提出まで、あと1か月だった。
(次回に続く)

紅白歌合戦71回NHK紅白歌合戦(2020年)で「守ってあげたい」を歌うユーミン(NHK提供)
 
紅白歌合戦77億人えがおプロジェクト」特製Tシャツ

いけ

いけ 別府生まれ・別府育ち。趣味は海鑑賞・ヨガ・寝ること。

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